"創作"の記事一覧

狸と狐 9 ゴエモン

(承前 和尚さん?に化けようとしているタヌキ) 私は年老いた狸だ。山間の猫の額ほどの田畑を耕して暮らす、独りの男の家に居候しているタヌキだ。いつの頃からか、私が座の下を塒にしている事を知った彼が、時たま畑で採れた作物の一部を分けてくれるようになった。先ほども、男が何か一言二言声を掛けながらジャガイモを縁の下の窪みに置いて行ってくれたの…

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狸と狐 8 本家

 (承前) 男が土間に座り込み、大きめの砥石と、小さ目の仕上げ砥石を三和土に並べ、鎌や鋤、鍬などの手入れを始めた。手桶には水も張ってある。シュウシュウ、シュッシュ、シュウシュウ、シュッシュと音がする。男の研ぎ方はとても滑らかだ、とてもリズミカルだ、連続する、等間隔の音を聞いていた私は、少し眠くなってきた。 夢現の中で、私は爺さんタヌ…

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狸と狐 7 分家

(承前 月を愛でつつ構想を練るタヌキ) 男は日曜日を休息のための日と決め、その日だけは少しだけ遅くまで就寝している。だが「休み」の日であっても野良に出で田畑の世話を焼くことが無いというだけで、家の中で出来る仕事を見つけては精を出す。 彼には家財と呼べるほどの持ち物は殆どないのだが、農作業に必要な物については意外なほど数を揃えて保有し…

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