田舎の転校生 72 あっという間の六十年
(承前)
上って休んでゆけと何度も勧められた。着く前から何となく会えないような予感がしていた。会わない方が良かったのかも知れないと、理由にならない理屈をつけて、自転車を引きずり大川の土手にそのまま投げ出すと、人気のない河川敷に出た。
気のせいか神楽のお囃子が風に乗って肩の辺りを通り過ぎた。草いきれの中に寝転ぶと、綿菓子のように自…
昭和23年生まれの男性が、偏った感性で選ぶ歴史上の人物や出来事について、極めて不定期に語ります。
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