"中原中也"の記事一覧

ゆてきかへらぬ ━京都━

人の思い出も変質するものなのだろうか。人は、自分の思い出も潤色するのだろうか。 中原中也は、今からざっと百年ほど前の大正時代に、故郷の山口から京都に移り住んだ。十代の半ば過ぎの頃だ。彼は、その後、東京に出て文芸の世界で生きて行くのだが、昭和十一年の冬『ゆきてかへらぬ』を『四季』に発表している。その作品の半ばには、   さてわが親しき…

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思い出す未刊の詩篇 

何かの拍子に、中原中也の作品の一節が思い出されることがある。年寄りにとって「未来」は「彼岸」とほぼ同意義だから、中也が「在りし日」と呼んだ過去の残像を追いかけるしかない、のかもしれまい。   ツツケンドンに  女は言ひつぱなして出ていつた  (中略)  対象の知れぬ寂しみ  神様はつまらぬもののみをつくつた 「ノート1924」の中に…

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誕生日

四月二十九日は詩人・中原中也の誕生日である。彼は、明治四十年の今日、山口県の湯田温泉という所で生まれた。西暦1907年のこと。両親が結婚して7年目、そして中原家では45年ぶりの男子出生だった。お祝いの宴は三日に及び、養祖父・政熊は「奇跡の子」と呼んだ。 この日は勿論、昭和天皇の生まれた日(1901)なのだが、同じ日に生まれた著名人の一…

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