猪の正体 1 復活する神様
(古事記より)
古事記神話を読まれた方は良くご存知だと思いますが、出雲神話の主人公である大穴牟遅神(オオアナムチ、大国主神の別名とされる)には兄弟が八十柱も居ました。悠久の昔の神々の世界ですから実際に八十人もの「庶兄弟(異母兄弟)」がおられたのかも知れませんが、名前を覚えるだけでも大変だっただろう、等と考えるのは筆者が只の凡夫である証と言えそうですが、それはさておき。
オオクニヌシが稲羽の素菟(しろうさぎ)に正しい治療方法を教えたことで、皆が嫁に迎えたいと望んでいた八上比売の心を射止めた事に怒った八十神たちは、彼を亡き者にしようと画策します。共謀した八十神は伯伎国の手間の山本まで来た時、
赤き猪この山に在り。故、我、共に追い下しなば、
汝、待ち取れ。若し待ち取らずば、必ず汝を殺さん
と大国主命に命令し「火を以て猪に似たる大石を焼き」山の上から転がし落としました。兄たちに云われるまま愚直に「猪」を捕えようとした彼が「その石に焼」かれて命を落としたのは言うまでもありません。
この時は母親の刺国若比売が神産巣日之神に頼み込んで派遣してもらった「キサガイ姫とウムギ姫」の二人に何とか治療して復活を果たしたのですが、執念深い八十神たちは再度「欺き」山の中に樹木で拵えた罠のようなものを仕掛けてオオクニヌシの命を狙い続けました。
そんな状況の中、何とか生を永らえた彼は、母の忠告に従い木国の大屋毘古神(五十猛神の別名)の許に逃れ、更には同神の『須佐能男命の坐します根の堅州国に参向うべし』との託宣を受けて、スサノオの待つ国に赴くことになるのです。
八上比売との婚姻話が、いつの間にかスサノオの娘・須勢理毘売との出会いへと発展して行く訳ですが、ここでは出雲神の象徴としてのオオクニヌシが如何に再生力(復活力)に優れているかを強調するのが編集者たちの狙いだったとも考えられます。
(続く)
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