ピンの話 4 特別なピン

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承前 美人に見とれる艶二郎、絵師も京伝・北尾政演)

人様の容姿などについて、あれこれと噂するなどもっての外、要らぬ世話だと分かっていても、
いつの世も同じで、限りなく多数に近い男どもは「美人」が気にかかる、ものらしい。
関西弁なのか、共通語なのか少しく不明だが「べっぴんさん」という言葉がある。

「ピン」はピンでも、こちらの「ぴん」は、どうも「品」が原義にあるようで、
「特別な品」だから「べつひん」「べっぴん」と呼びならわしたものか。
また、辞書によっては「品」ではなく「賓」の字を充てているものがあるが、
これは後から「それらしい漢字」を持ってきただけだろう。
こちらの「品」から来ている言葉を探すと、

  すっぴん  さらっぴん

などが直ぐに思い浮かぶが、前者は「素っぴん(ノーメーク)」で「素顔」を意味し、
後者は「更品」が元になった「新品」を指して言う関西弁か。
また当節余り流行らないが真っ新の紙幣の事を「ピン札」と表現する。

冒頭に貼り付けた画像は山東京伝のヒット作『江戸生艶蒲焼』の主人公である
艶二郎が描かれた表紙の一部分だが、なんとかして「通人」になりたい一心の彼は
とんでもない行動で周囲を驚かせる騒動を巻き起こす。
そして彼が見つめる、その先に居るのが江戸美人なのです。

 (終わり)


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