たいぎらし

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力持ちで温厚なノーやんは、クラスの人気者である。
もちろん相撲や腕相撲で彼に勝てる者など一人もいやしない。
そんなノーやんの様子がおかしい。

  あげに、たいぎらしそうにしとーが、
  どこぞ、いたしだないか。

「たいぎ」は良く時代劇でお殿様が家来たちの働きを労う時に
上から目線で発する「大儀じゃ」の「たいぎ」と同じである。
もともとは「大変な大事」「苦労」を意味していたものが、
時代と共に変化して「疲れる」「くたびれる」の意となった。
出雲では日常的に疲れて怠い様子を「たいぎな」と言う。
また「たいぎらし」の「らし」は「らしい」が約まったもので、
「にくたらしい」「はげしい」の「しい」とも同義だと思われる。

関西では「たいぎ」は殆ど使われず、その代わりに「しんどい
「しんどそう」が話し言葉として頻出する。
この「しんどい」の大元は「心労」だとみられており、
「しんろう」に「イ」が後から付いて「しんろ」に変化、
さらに「ろ」が訛って「ド」となって「しんど」という言葉が
使われるようになったらしい。
かつて、難波のお母さんたちは買い物などで、思い手提げ籠を
両手に持ち、遠い市場からあるいて自宅まで辿り着くなり、
玄関の板の間にペタリと座り「あぁ、しんど」と言ったものである。

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