稲荷とキツネ 2 「うか」とは何か

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承前

 では、例によってお祭りされているカミサマについて見てゆきましょう。神社の案内書によれば稲荷大社の主祭神は「宇迦之御魂大神」(うかのみたまおおかみ)で、アマテラスと同様に女神です。

 古事記が記している神々の系譜上はスサノオ系統に属しているのですが、これまで紹介してきたオオクニヌシとは、また異なる系統のカミサマです。同じスサノオ一族でも、人間的な個性を与えられている人格神の性格が色濃いオオクニヌシとは違い、素戔鳴尊と神大市比売命の子供として位置付けられている宇迦之大神は自然神の雰囲気が漂っています。

 その兄弟とされる神々も奥津島・市杵島・多杵島比売命の三姉妹や大年神など、自然を神になぞらえたものと考えられ、父神が「大山祇神」(おおやまつみ)であることも宇迦之御魂の本質が何であるかを窺がうヒントになるように思えます。

 また、五穀神話の主人公でありスサノオの妹でもある大宜都比売神(おおげつひめ)や、伊勢神宮(外宮)の祭神である豊受大神(とようけのおおかみ)と意図的に結び付けられた形跡があることから、食物・穀物のカミサマであることは間違いなさそうです。

五穀神話=古事記などに記されているお話で、大宜都比売の体の各部分から五つの穀物が発生した、というものなのですが、興味のある方は原典を読んでみてください。外国語との相似を指摘する「説」もあります)

 ところで「うか」という耳慣れない言葉は、相当古いものらしい。語感から、すぐに「閼伽(あか)」(水)との関連を思い浮かべてしまうのですが「あか」は、もともとが仏教で仏に供える水を指すサンスクリット語の「argha」を音訳したものだということなので、どうも親類縁者の関係ではないらしい。

 (ただ、言葉の原義は『価値あるもの』ということなので、結び付けたい誘惑にかられるのですが…)唯一の手掛かりを古事記に探すとすれば、お馴染みのスサノオ・オオクニヌシ伝説の中に出で来る山の名前しかない。
 それはスサノオが娘を連れて逃げるオオクニヌシ(オオナムチ)に対して贈った餞の言葉に出て来るもので「宇伽能山」(うかのやま)というものです。

(続く)

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