田舎の転校生 66 映画の様な出会い

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承前

 大言壮語、公取委なら即告発の特別見本市から抜け出すと、まだ陽は西の空に沈みきらず、人の波も途絶えることがない。
見るべき物は見つ、自転車置場に行ってみると、紺色のワンピースに白の鍔広帽子、何やら気取った感じの娘が連れと一緒にこちらを凝視している。   

 『貴方が、都会から来た人であることは承知している。
  私は、県庁所在地に住んでいる青木瞳と云う者である。
  決して怪しい者ではない。貴君に交際を申し込む。
  ただ、遠く離れて住んでいるので、当面、文通だけで我慢したいと思うが、返答、如何に』 

 標準語と云うか、東京弁風の物言い、相当練習したらしい成果が言葉の端端に現れているのだが、緊張気味なのか、ややこわばった表情が顔に張り付き、棒読みの憾は否めない。
 一瞬、娘の頭の内部構造を疑ったが、人垣に混じり、隠れるように付き従う、肉体派女優のしたり顔を見つけ納得。

 バトンタッチ宜しく、出しゃばり進子が得意気に語るところに因れば、この変人は彼女の一歳上の従姉妹。一族郎党の中でもすこぶる評判の才媛。その証拠に付属中でもトップクラスの成績、将来の有望株として折り紙付き。

 たまたま貴男の噂話をしたところ、田舎の不良と云うものに痛く興味を覚え、是非、後学のため現物が見たいとかねがね言っていた。今日の祭りに招待したのだが、何という偶然の一致、神の悪戯、ばったりあったのも何かの因縁。大変喜ばしい。

(続く) 


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