田舎の転校生 29 委員のバッジは七宝焼
(承前)
「一、二年のうちは男も女も一緒に遊ぶけど、
やっぱり三、四年になると、男女の別がはっきりしてくるやろ。
そんな頃『男のグループに入れんかったら恥や』いう思いが強うなってなー。
まあ、女の子にも馬鹿にされるのは嫌やし」
「分かる分かる、勉強は別にしても、運動や遊びの出来へんやつは、
どうしても仲間外れにされるからな」
「山や川で走り回ったりして遊ぶのは別にして、野球というかキャッチボールと
面子の二つは出来て当り前、これがあかんと話にならん。あとはビー玉かな」
「とにかく、努力した訳や」
体操も相変わらず得意ではなかったが、四年生に成る頃には、何とか人並みの事は出来るようになり、通信簿でも「三」をもらうことが出来、励みになった。思い返すと不思議だが、必死に遊びを覚え、身体を動かし、みんなに着いて行こうとするうちに、少しずつ体力も増し、何かが一つ出来ると、また次の目標がおぼろげに見えてきたように思う。
人気投票の憾もある、学級委員の選挙でも候補の一人になったことは自信となった。
「えらい出世やないか。ほんまに委員になれたんか」
「自分の名前が呼ばれて、黒板に『正』の字画が一つ一つ書き加えられる度に、
心臓がどきどきしたわ。クラスの何人かが票を入れてくれた事が新鮮な驚きやった。
委員の群青色の七宝焼きのバッジもらった時は、もお、理屈抜きにうれしかった」
(続く)
楽しく歴史や文学に親しみましょう
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