大国主と垂仁天皇 1 重なる神名
古代史の世界を長年探訪していると、その内、以前には思いつかなかった神々と大王そして日本各地の豪族たちとの隠された繋がり、縁等が複雑に絡み合った麻糸状の一端が朧気ながらも暗闇の彼方に見え隠れして、秘密の財宝の在り処を記した門外不出の古地図を発見でもしたような気持に、ほんの一瞬浸れることもある。
それが資料の分析に時間と能力の全てを注ぎ込んだ己自身への細やかなご褒美でもある訳ですが、そんな歴史探訪の旅を続ける内に、何とはなく「お気に入り」の神様や人物の像が幾つか形作られます。筆者の場合、早くから継体大王の出自などをHPのテーマの一つに掲げていた事情もあり、系譜を遡る途上で応神そして垂仁という二人の存在が大きな意味を持つようになったと思われます。
古事記と云う書物は様々な特徴を持つ資料で、見る者の持つ問題意識により時に万華鏡のような風景が現れたり、その一方では記された文言の意味すら解読不明で、編者たちの意図さえ掴みかねる部分も少なくありません。後者の典型が「オオクニヌシの神裔」と呼ばれている一連の系譜で、概ね次のような神様たちの名が伝えられています。
註:この段の冒頭にあるオオクニヌシと多紀理媛命、また神屋楯媛命との子供たちは除き、八島牟遅能神の子以下についてのみ書き出してあります)。また、近江の御上神社の社家である三上祝の系図との比較が必要なので下の段に並置しました(三上氏の家系は『諸系譜』を参照したもの。第四代の彦伊賀津命が神武天皇の時代にほぼ同期します)
| 初代 | 二代 | 三代 | 四代 | 五代 | 六代 | 七代 | 八代 | 九代 | |
| 父 | 大国主 | 鳥鳴海神 | 国忍富神 | 速甕之多気佐波夜遅奴美神 | 甕主日子神 | 多比理岐志麻流毘神 | 美呂浪神 | 布忍富鳥鳴海神 | 天日原大科度美神 |
| 母 | 鳥耳神 | 日名照額田毘道男 | 八河江媛神 | 前玉媛神 | 比那良志神 | 活玉前玉媛命 | 青沼馬沼媛神 | 若盡女神 | 遠津待根神 |
| 子 | 鳥鳴海神 | 国忍富神 | 遠甕之多気佐波夜遅奴美神 | 甕主日子神 | 多比理岐志麻流美神 | 美呂浪神 | 布忍富鳥鳴海神 | 天日原大科度美神 | 遠津山岬多良斯神 |
| 初代 | 二代 | 三代 | 四代 | 五代 | 六代 | 七代 |
| 天津彦根命 | 天御影命 | 意富伊我都命 | 彦伊賀津命 | 天夷沙比止命 | 川枯彦命 | 坂戸彦命 |
| 八代 | 九代 | 十代 | 十一代 | 十二代 | ||
| 国忍富命 | 大加賀美命 | 鳥鳴海命 | 八倉田命 | 室彦命 |
(続く)
楽しく歴史や文学に親しみましょう

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