吉原と文人 1 「からまる」の誕生

蔦屋重三郎が江戸の吉原で生まれたのは、1750年の1月7日であった。父は尾張国の出身、母はもともと江戸育ちだったらしいが、両親と一緒に暮らしていたのは誕生から数年足らずであったらしく、幼い柯理(からまる)は数え年の七歳で喜多川氏の養子として家を出た。その養家がどのような商売をしていたのかは伝えられていないが、「蔦屋」という商号は喜多…

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石工になった夢

照明は自然光だよりなのか、ほの暗い部屋全体で一つの作品に仕上げようとしている、そんな企画展の場所なのだろうか?初めに入って来た人が『なんだ、どこにも拳のモチーフがないじゃないか』と批判の声を上げたのだが、続いて入室した注文主に見えた人物が、『いや、ちゃんと拵えてある。見える』そう言いながら正面の壁の左上を指さした。その灰白色の拳は「…

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