中原中也とダダイズム 41 自展する詩心

(承前)  この作品の初出は雑誌『半仙戯』1932年6月号であり、所載のものと詩集『山羊の歌』との間には多少の異同がある。現在流布されている中原の詩集は、この『山羊の歌』をテキストにしているので、その詩句と引き比べてもらえば違いは分かるのだが、大きな異同を次にあげてみる。ただし、聯分けは定稿のものに従う。   第1聯の4行…

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台湾歌手2 龍飄飄

原曲の『レモン月夜の散歩道』(市川昭介作曲、西沢爽作詞)を都はるみが歌い始めたのは昭和四十二年末で、丁度彼女が二十歳になろうとする頃だった。「売り」だった「うなり」「こぶし」は封印して、この人にしては珍しく軽快で明るい音調の楽曲は当初から注目された。 仄聞すれば、お隣の台湾でも相当な人気を集めたらしく、検索してみると確かに多くの歌手が…

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中原中也とダダイズム 40 春の夕暮

(承前)  この引用文は「叫び」そのものを忠実に再現したいという中原の願望が書かせたものだが、この認識は17番詩にも、そのまま適用できるだろう。「表現上の真理」を方法論に重点を置きながら求めていた彼は、認識以前という命題の前に立ち逡巡している。 1聯の描写によって、当時の中原が「心」の充足を求めて詩作を行っていたことが…

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